千葉県の台風被害による停電がひどいことになっていた。首都圏民にとっては、3.11の計画停電以来の大規模停電である。しかも3.11のような短時間の計画・輪番停電ではなく、一週間以上の継続停電。悪いことに残暑の中、冷蔵庫や空調が使えないことのダメージは計り知れないものだった。ただ、停電被害と言うと、まずそっちにみんな目が行きがちだが、実はエレベーターが使えないこともマンション住民には大きな影響を与える。停電が「当たり前」ではないわが国では、みなこの点が意識の外に置かれやすい。そこは要注意だ。
榊淳司氏などが展開するタワーマンション悲観論に私が一番賛同するのが、タワマンのいざというときの生活脆弱性の面である。停電が来たら、タワマン生活なんて拷問以外の何物でもない。私は今賃貸マンション生活だが、普段はエレベータ―に乗るものの、最悪歩いてもいいという高さには住んでいる。これは防災の観点から最低条件だと思う。そうでなければ自宅が無事なのに近隣の小学校体育館で避難所生活を余儀なくされる。
しかしそれは行政は想定しているだろうか?武蔵小杉や東京ベイエリアのタワマン街でタワマン住民が「自宅は無事だが上がれない」という理由で一斉に避難所に押しかけてきたら、間違いなくパンクする。そもそも地元町内会に入っていないくせに、と揉めることも必至だろう(ご存じない方も多いだろうが、あの手の避難所は行政は運営支援はするが、実際の運営は町内会が行っている)。下手をすると拒絶されるのではないだろうか?
また、3.11のとき、東北の津波・原発被害があまりに深刻だったためスルーされてしまったのが、やはり千葉県浦安市の液状化被害。各分譲物件がどの程度持ち出しで補修したのかは定かではないが、もうこんなところに住みたくないと思ったときの資産価値低迷リスクを考えると(風評被害を含めて)ぞっとする。
ちなみに、武蔵小杉のタワマンに住んでいる人からあとから聞いたが、タワマン特有の薄壁のせいなのか、壁に損傷がありマンション全体で補修をしたそうだ。個人的に聞いた話だが、資産価値減少を恐れて公にはしていないっぽい。クロスの張替も当然あったので、住みながらのリフォームということで、生活面でも影響が大きかったらしい。
こうしてみると、地震国・風水害国日本で、災害で毀損しうる高額財産を持つなんて、リスクが高すぎるのだ。家賃なんて保険料と割り切れば、安いものではないだろうか。