この4月に、民法が大改正され、瑕疵担保責任が契約不適合責任というものに変わることになっている。細かい話はともかく、一般論(特約を結ばない場合)としては、これまでより売主の責任が重くなることは間違いないようだ。
そんなこともあり、不動産を売るなら民法改正までに!と煽る「売り物件求む」チラシを見たことがあるが、最近はもはや間に合わなくなったとみて、民法改正後もうちに頼んでもらえれば安心ですよ!という路線に舵を切ったようだ。
先日うちに入っていたチラシでいうと、売却物件の設備を事前に点検してくれるほか、物件の引き渡し後一定期間内に故障等が起きたときの売主負担補修費を補てんする仕組みを導入しているので、ぜひうちに仲介をお任せください、という話だった。
そこだけ聞くとすごく魅力的でぜひ、と思いそうになるのだが、 私は個人的に、この民法改正を使って不動産売買を煽るのはピントが外れていると思っている。
ちょっと考えれば、これは差別化が難しい仲介業者間での売主獲得競争(「専任媒介」の取り合い)のための施策だとわかるからだ。ある業者の場合、10万円程度を上限に補修代金を負担するというもののようだが、業者からすれば、一定の条件に当てはまったときだけ仲介手数料を割り引く(還元する)と言っているのに等しい。給排水の事故の時だけ数百万の補償がされることになっているが、これはほぼ築年数で決まってくるし、危ない物件ならそんな仕組みでケアしなくても買主のリフォーム、リノベの中で処理することが多いと思う。
私が旧制度下でマンションを売った時に思ったのだが、築年数が建っているマンションの場合、売却前に売主がリフォームしていなければ、水回りを中心にかなりの設備を買主がリフォームすることが前提。ボロい設備で買わされるからその分、安く買いたたくのではないかという話は措いておき(業者の直接買い取りでない限り、個人間取引では坪単価でみてしまうのでそうそうない)、リフォーム前提であれば、どうせ住み始める前に多くの設備は取り換えてしまうので瑕疵担保云々なんて関係ないことも多いのだ。
私が現代ビジネスで体験談を連載している、ヤフー&SRE不動産の「おうちダイレクト(セルフ売却)」のように売主側仲介業者がいない取引の場合、売主が過度な負担を負いかねないから危ない!だからやっぱりプロ業者に任せよう、という論調が出てくることが予想されるが、まさにどこまで「正しく恐れるべきか」の程度問題のような気がする。
私の現時点の予想では、
民法は変わるけど、特約で効果を除外できる「任意規定」であり、変わった法律そのままのルールで取引に適用する人ばかりではないから、売主は極度に恐れる必要はなく、ただちに問題が顕在化することはなさそう
だと思う。