1年ほど前ですが、マンションブロガーとして有名なのらえもん氏が書いた、購入のほうが幸せだよという記事を見かけました。まあそういう意見もあるのでしょうが、これこそ見解の相違、平行線という感じもします。
私としては、賃貸派代表として、異論を提示してみます。
1 賃貸はある理由でクオリティが意図的に下げられている
賃貸物件は投資利回りのため、設備にあまりお金をかけないからだ、というのはよく言われること。 でもまあどういう家に住みたいかは人それぞれです。さすがに賃貸でも風呂の追い炊き機能とかは普通にあるわけで、カウンター式のシステムキッチンまでなきゃホントに不便なのかというと、私はそうは思いません。・
「転勤などにより空いた住戸を転用した分譲マンションの賃貸募集もありますが、普通の賃貸に比べて割高となります」
とか書いてますけど間違ってます。おそらく、高スペックだから高く貸せるよ、という理屈に基づく論法なのでしょうけど、空論です。よく考えてみてください。転勤で空室になる部屋って、いずれ戻ることが前提なので、期限が来たら必ず出て行ってもらわなければなりません。つまり、旧来の借地借家法のルールではなく、更新がない期限付き(定期借家)で貸すので、たとえば2年で出ていかなければならないことを承知で借りることになります。そこにずっと住み続けられないため、借り手募集の競争力は落ちるので、周囲の同スペック物件より家賃は少し安めになるのが普通です(今の私が住んでいるところがそう)。
2 住宅ローンはサラリーマンの特権である
色々書いてありますが、一言で言うと、超低金利で借金して資産形成できるのが持ち家のメリット!という主張なんでしょう。確かにこれが当てはまる場合もあります。しかし当てはまらない場合もあるんです。変動金利の急騰、資産価値の予期せぬ下落で、持ち家がデメリットになるリスクも。私は五分五分だと思っています。
「資産性が高い物件を購入することにより、資産形成をすることすら可能です」
これは体のいい営業トークにしか私には聞こえません。こんな物件、時期にもよるけど今後は10件に1件もないと思いますよ。いずれ首都圏ですら人口は減るんですし。
そもそも持ち家を買うことは投資だ、資産形成だという主張の急先鋒としては、のらえもん氏よりも沖有人氏が有名ですが、私はそもそも 彼の主張に疑問を持っています。投資に成功するためにはまず物件選び(どれ)が大事ですが、さらに売買(正確には買→売の順)の時期(いつ)も大事だということです。同じ物件でも時期によって値段は変わるわけですからね。うまくやれば損をせずに済む、得ができる、それは正しいけれど、経済情勢の影響も受けるし確率的な面もあります。沖氏のやり方だと引っ越しを繰り返すことが前提になるので、その点は賃貸生活と変わらないか、それ以上かも。ライフサイクルよりも損しないことを重視すれば、子どもの学校が変わるなど、家庭生活への影響もそれなりに出るかもしれません。QOLが変わることもあるかもよ?ってことですね。 マンション買い替えを繰り返す中で、地雷踏まなきゃいいけど…という綱渡りのメリットだと思います。
3 住宅ローンの破綻リスクは思ったほど高くない
これは持ち家派が賃貸より有利という話ではなくて、デメリットがないよと言ってる話ですね。
4 住宅クオリティをあげることによる生活の向上
「良質な住宅は、QOL(=生活の快適さ)を著しく向上させる」との主張。一方で、都心の賃貸から郊外の持ち家購入、なんて流れになると通勤時間が増加して平日のQOL悪化、なんて話もありますよね。
「1棟数百戸といった大規模物件なら、自宅以外にも広大な庭や多彩な共用施設、眺望を楽しめるスカイラウンジなどを利用できることもあります。新築時の物件規模で値段はさほど変わらない」という主張も間違ってはいませんが、イニシャルコストの話であって、10年後はどうですか?と言いたいです。別にいいや、って施設の維持費を払うのはどうですか?
ということで、私はまったく持ち家を支持することができないのでした。