不動産開発は「法に則って」進めれば問題ないのか?

某不動産デベロッパー(記事中では実名)のマンション開発案件に関するニュースを立て続けに読みました。

どちらも、現在の計画のまま進めると、建設予定地周辺の住民と揉めそうな気配。デベロッパー側は、法律に則って進めているので問題ないし、変更する気もないとの態度のようです。事業者側の説明や住民側の意見表明の機会を用意するのは、意見を聞いたというプロセスが大事だからなのでしょう。

不動産デベロッパーの罪

不動産デベロッパーは民間企業だから利益極大を図るのは当然、と言いたいところですが、現代社会はそうでもありません。法令順守やCSR的なところも含めて投資家は評価する時代になっているからです。経営指標がよほど悪化しているのならともかく、そうでもないのに強欲な会社というイメージを持たれるのは、株主にも良くないと思うのですよ。

そもそも彼らが盾にする法律の基準とは厳守ラインであり、建築の世界では、その基準よりも余裕を持たせた設計にすることは、当然付加価値としてありえるわけで、そうするかどうかは市況(建設コスト・販売金額)とも絡んだ、収支採算効率の問題となります。販売戸数を増やしたいあまり、限界まで階数を増やしすぎると強欲といわれかねないのではないでしょうか。

話は脱線しますが、東京五輪選手村跡地の晴海フラッグは、もともと販売を不安視する声もあっての値付けをしたら、都庁の役人の想定を超えるほどの人気が出てしまって不動産業界や投資家だけを潤わせ、抽選で外れて住みたくても住めない人をたくさん生み出したとか言われたんです。ことほどさように不動産の値付けは難しいことはわかるんですが、法令の基準ギリギリまで攻め(=戸数を増やさ)なければ採算が危ないなんていうのなら、そもそもプロジェクトとしてヤバいのでは?とも感じてしまうわけです。

住民に対抗手段はあるのか

地元行政はどうやら静観の構えですね。まあこれは致し方ないでしょう。もしデベロッパーが住民と揉めそうな場合は、地元行政がデベロッパーに翻意を(中止というよりは計画の微修正で妥協点を見つけるよう)促すくらいはするでしょう。しかし、強硬な手段(法令の基準を満たしているのに建設を許可しないなど)には出られないはずです。変な動きをして裁判を起こされて負けるようなことはできませんから。

では、住民はどうするか、ですね。

話は変わりますが、先日、東京都国立市で、建築・景観基準を満たして完成したのに、富士山の眺望阻害が理由で引渡直前に解体が決定した分譲マンションの例を覚えていますか?あれは某ハウスメーカーの開発案件でした。あの事案は、地元意見で、当初計画から1階分低く変更していたんですが、それでも土壇場で解体を決定するという、ある意味暴挙、ある意味英断でした。

なぜハウスメーカーがその決断をしたのか、真相は藪の中です(公式には、景観の大切さに気付いたとか言ってるようです。何をいまさら、ですよね?何かあったんでしょ、って思いますよ)。

そんな話を聞くと、川崎や江東区の件も、建築開始となる前に、なんとかデベロッパーの方針を転換させる方法はないのか、できるのではないかと考えたくなりますよね。

で、ハウスメーカーが方針転換した真の理由ですが、一部で噂になっているような、国立住民を敵に回すのが面倒だと思ったわけじゃないように思います。

以下は、あくまで私の個人的な推測(邪推)だとお断りしておきますが、おそらく、単純な社内事情によるお粗末な結果じゃないでしょうか。なぜそう考えるかというと、実はこのハウスメーカー、何年か前に有名な、いわゆる地面師、つまり不動産詐欺事件に遭ってます。怪しい案件だと気づいていたのに、社内のキーパーソンが進めろと言って止められず被害に遭ってしまった。しかしその責任は十分に取られていない(本件の責任者である社長を取締役会で告発した会長が、社長の返り討ちにあって逆に取締役から追放されてしまった)のです。そういうことがあると、社内はガタガタになりますので、その余波がこういうところにも影響しているのではないかと考えてしまうのです。

最初の記事のイケイケ系デベロッパーは、実はこの詐欺事件で、被害に遭ったハウスメーカーに詐欺事案だから注意しろと警告したこともあったようです。うーん、武士の情けというか、いやライバルに塩を送っているともいえるのかもというところが何とも不思議な感じがしますが。

いずれにせよ、イケイケ系のデベロッパーが自発的に方針転換してくれるためには、内部が混乱するとかの事情がないとつけ入る余地はないかもしれません。激しい反対運動を起こして、国立のように開発がやりにくい土地だ、という印象を持たれることは、地域の不動産価値を中長期的に低下させかねず、結局は住民のためにならないのです。

一番のポイントは妥協点・条件を示して交渉のテーブルに着くことなんでしょうね。

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