誰かに何か都合の悪いものを押し付けるための駆け引きをしているような話をするとき、「ババ抜きをしている (ジョーカーを押し付け合っている)」 という比喩が使われる。古くなりゆく建物を所有している場合も、いずれ買い手がつかなくなるほどに資産価値が暴落する前に誰かに売ってしまえば逃げ切れる、という文脈が、ある意味ババ抜きのように語られることがある。
否、否。私はその話はババ抜きという表現では正確に表せないと思っていて、むしろジジ抜きと考えたほうが正確だと考えている(52枚の札にジョーカーを足してやるババ抜きではなく、ジョーカーなしの52枚からさらに1枚抜いて、ペアでない1枚を含む51枚によるババ抜き。要するに、ジョーカーに相当する「ペアにならない1枚」が何の札か最後にならないとわからない)。
要するに、不動産の価値劣化というものは、いつ、どの物件に襲い掛かるかなんて、はっきりとしたジョーカーのように最初から「こりゃダメ物件だ」ってわかるものばかりじゃないということが言いたいのだ。良い物件だと思っていたのに、後で突然、実は転売困難あるいは相当値下げしないと売れない!、「ひえー!」ってことになるケースも結構多いのじゃないだろうかと思っている。
話を比喩に戻す。ゲームのルールはババ抜きだと思い込んでいて、自分はジョーカーを持ってないからと安心していた。ところがジョーカーでないと思っていたカードが最後の最後にジョーカーに化けた。ゲームのルールはババ抜きでなく実はジジ抜きだったからだ…ということなんだよね。
まかり間違って、いずれ絶対賃貸派の本を書くことができたなら、私はこのネタを絶対前書きにしてやろうと思っている。で、なぜそんな話を今日書いたのかと言うと、ヤフーニュースで、不動産価値に詳しいさくら事務所の長嶋修さんが小杉のタワマン災害に関して、まさにそんな、ババ抜きからジジ抜きへのルール変更?ととられかねないショッキングな提言を述べていたからだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191126-00000001-yonnana-soci&p=4
「不動産売買の際、仲介業者に浸水可能性の説明を義務づけるべきだ。不動産の価格査定や金融機関の担保評価にも反映させるべきだろう」
「武蔵小杉のタワーマンション群の中でも、潤沢な修繕積立金を備えていて「持続可能性」が高いものと、計画が甘く、明らかに積立金が不足している「廃墟予備軍」と思しきものが入り混じっている。これらは本来、一律の価格であるはずがない。管理組合の運営状態を不動産査定や金融担保評価に反映させる仕組みを、国は早急に整えるべきだ」
その通りだが、これって、物件によっては資産価値の下落を引き起こし、まさに「普通のカード」がいきなり「ジョーカー」になってドボンするってことだよね。
国交省、訴訟起こされないだろうか?もちろん、訴えられても国は勝てるだろうけど、死なばもろともで訴訟を起こされかねないくらいの破壊力がある改革を求める提言だ。
私は株式投資を結構やっている人間なので、株と不動産投資の違いで切実に思うことだが、株は、その銘柄の株価の妥当性(高すぎ、安すぎ)は、様々な指標で判定できる。経営状況も、財務諸表が開示され、四半期ごとの報告も行われる。こういう正確な情報をもとに投資判断ができるわけだ(だから、その信憑性を脅かす粉飾決算は大問題なのだ)。
それに対して、不動産は、本来価格に反映されるべき様々な事情を公開しなくてもいいことになってたり、よほど丹念に調べないと所有者ですら分からないことになってたりするので、隠したいわけではないが公開されていないのが現状。それで価格が維持されて表面上得している人が結構いるというわけだ。これをたとえば「故意なき粉飾」だと仮に呼び、徹底した情報開示により「粉飾」の打破を目指すのだとすると、、ううん、血の雨が降りそうだな(汗)。