世の中には、絶対持ち家派ということではなく、賃貸を勧める優れた啓発記事もある。

https://president.jp/articles/-/23760

 だが、この記事の中での持ち家賃貸支出額比較でも、やはり持ち家の支出計算は荒っぽすぎる。持ち家に30年住んで、既定の管理費・修繕積立費以外に持ち出しのお金が発生しないとでも思っているのだろうか。修繕積立費は、あくまでマンション共用部分の修繕費の積み立てである。専有部分を30年使って、修繕がゼロで済むことはまれだ。一番大きいのはガス給湯設備。一般的に寿命(交換推奨時期)は10年程度とされるので、30年なら2度は変えるべきだろう(1回当たり安くても40万程度はかかる)。また今は家庭でも付けるのが当然となったシャワートイレも同様(こっちは1回10万円はしないだろう)。

 このほか、賃貸マンションならついている(設置・維持費用は家主負担)エアコンも省エネ性能面で10~15年程度で交換するのが普通。そう考えていくと、持ち家では、賃貸物件ではかからない維持費が10年で100万円くらい平気でかかってしまうのだ。

 しかし、ほとんどの持ち家・賃貸比較では、持ち家コストとしてこの点が組み込まれていない。その理由はなぜかと考えたとき、まず思いつくのは、「はっきりしないから組み込めない」ということに尽きる。家賃や更新料の発生は、値上げがない限りだいたい想定できるが、修繕はいつ発生するかわからないからだ。でもだからといって数字を見込まないのは行き過ぎている。保守的な予想で、災害などによる専有部分の損傷を含め、持ち家では、共用部分の修繕積立金負担のほかに、専有部分の維持費として年10万円くらいの支出は見込んでおくべきなのである。

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