私はバブル期は学生で、社会人がパーティーや投資に狂喜乱舞するのを横目に見た世代だが、あの当時、不動産価格が跳ね上がり、庶民は一生家を買えないだとか、あるいはいったん郊外に家を買うが高値で転売した原資で23区に戻ってくるぞみたいに息巻く話はよく聞いた。
しかし実際は、郊外に物件を買ったあとバブルが崩壊し都心に戻ってくることができなくなり過酷な通勤を余儀なくされた(若しくは郊外の物件を処分するために少なくない損切をせざるを得なくなった)人を多数生み出した。
バブル崩壊により、日本が長期経済低迷に陥り、不動産価格が暴落後、もうあんなに不動産価格が高騰するなどとは誰も思わなかったはずなのに、いつのまにか都心の不動産価格は上がっていた。リーマンショックで一回冷や水を浴びせられたが、いまや都心のマンション(特にタワーマンション)価格はバブル期を上回っている。
どう考えても新バブルである。その結果、新築マンションに手の出なくなった住宅需要層が良質の中古マンションを物色し始めた、とはここ近年よく言われるところである。だが、自分の感覚でいうと、中古マンション市場の活況も、オリンピックまであと1年残しながらそろそろ曲がり角というかピークアウトし始めているように思う。
そう考える理由は、私がいま住んでいる家のポストに入る、近隣の分譲マンションの売り出しチラシにある。近所にはタワー、板状の大規模マンションがいくつかあるのだが、チラシコレクターをやってみると、同じ物件のチラシが1カ月おきに何度も配られるようになっているのだ。つまり、売れていないわけである。長引くと、当然、価格変更(値下げ)もしてくる。しかし売れないのだ。
半年ほど前だとこんなことはなかった。もちろん、当初の価格設定が強気すぎるという面もあるだろうが、オリンピックを前に中古取引価格の上昇傾向にも陰りが見えてきたのではないだろうか。